当サイトはアフィリエイト広告および第三者配信広告を利用しています。

『ゴールデンカムイ』の登場人物の多くは、ひとつの戦場を共有しています。

日露戦争の二〇三高地です。杉元も尾形も鶴見中尉も、そこから帰ってきた人間でした。この記事では、作中の前史となる二〇三高地の史実を整理します。

結論

  • 二〇三高地は標高203メートルの高地です。その高さがそのまま名前になっています。
  • 日本軍が占領したのは1904年12月5日です。11月26日から続いた攻撃の末でした。
  • 占領の中心になったのは第七師団歩兵二十七連隊です。作中の第七師団と同じ部隊にあたります。
  • 死傷者は極めて多く、戦死5,000人以上・戦傷1万人以上とされます。

二〇三高地とは何か

冬の丘陵地帯
二〇三高地は標高203メートルの高地でした(画像はイメージです)
項目 内容
名称の由来 標高203メートルであること
場所 旅順近郊
戦争 日露戦争(1904〜1905年)
戦い 旅順攻囲戦の一局面
日本軍 第三軍。指揮官は乃木希典大将

名前は、そのまま標高から来ています。203メートルという、地図上のただの数字が固有名詞になりました。

この高地が重要だったのは、そこから旅順港が見渡せるためです。観測所を置けば、港内のロシア艦隊を砲撃できます。

旅順攻囲戦という戦い

二〇三高地の戦闘は、旅順攻囲戦の一部です。

段階 内容
目的 要塞化された旅順を攻略する
方法 正面からの突撃を繰り返す
結果 甚大な損害を出しながら進む
転換 二〇三高地の攻略へ方針を切り替える

旅順は堅固な要塞でした。正面からの攻撃では、兵が消耗するばかりで進みません。

そこで攻略の焦点が、二〇三高地へ移ります。この高地を取れば、港の艦隊を直接叩けるからです。

1904年12月5日の占領

二〇三高地の攻撃は、11月26日から始まりました。

日付 できごと
11月26日 攻撃が始まる
12月4日 攻撃が続く。この日まで激戦が繰り返される
12月4日早朝 総攻撃を再開する
12月5日9時過ぎ 西南保塁への攻撃を開始
12月5日13時45分頃 東北堡塁への攻撃を開始
12月5日22時 完全に占領する

10日近い攻防の末の占領でした。その間、日本軍は膨大な数の兵を失っています。

第七師団歩兵二十七連隊

ここが、作品と史実が最も強く結びつく点です。

12月5日、西南部の一角を死守していたのは第七師団歩兵二十七連隊でした。そこを拠点として、第七師団の残りと第一師団の一部が攻撃を仕掛けます。

部隊 役割
第七師団歩兵二十七連隊 西南部の一角を死守する
第七師団の残余 その拠点から攻撃隊を編成する
第一師団の一部 攻撃隊に加わる

作中で月島基が所属するのも、第七師団歩兵第27部隊です。史実の連隊番号と一致しています。

つまり作中の人物たちは、この記録に残る戦闘を経験したという設定になります。考証がここまで踏み込まれているということです。

北海道・旭川に置かれた師団が、遠く大陸の高地で消耗する。その事実が、作品全体の前提になっています。

損害の規模

項目 内容
戦死者 5,000人以上とされる
戦傷者 1万人以上とされる
別の記述 全体で1万7,000人の死傷者とするものもある

数字には資料によって幅があります。いずれにせよ、極めて多数の兵が失われたことは共通しています。

この規模の損害が、戦後の批判を生みました。作中では第七師団長の花沢中将が、その責を負って自決しています。

爾霊山という命名

占領後、この高地には別の名が与えられました。

「爾霊山(にれいさん)」です。乃木希典大将による命名とされます。

項目 内容
名称 爾霊山
読み にれいさん
特徴 「二〇三」の音に通じる
記念碑 砲弾などを集めて造らせたとされる

数字の名を持つ高地に、死者を悼む名が重ねられました。音は同じで、意味だけが変わっています。

作中の人物への影響

二〇三高地は、作品の登場人物ほぼ全員に関わります。

人物 この戦場との関わり
杉元佐一 生き延び、「不死身の杉元」と呼ばれるようになる
鶴見中尉 前頭部を負傷し、額に金属の当て物をする
尾形百之助 この戦場で異母弟・花沢勇作を撃つ
花沢中将 第七師団長。戦後に批判を受け自決する

金塊争奪戦に集まった人間たちは、そもそも戦争に壊された人々でした。その前提が、この戦場に置かれています。

鶴見中尉が北海道の独立を構想するのも、ここが起点です。戦って死んだ兵と、生き残っても報われなかった兵。その両方を国が切り捨てたという認識があります。

日露戦争という戦争

二〇三高地の戦いは、日露戦争の一局面です。

項目 内容
時期 1904年から1905年
当事国 日本とロシア
主な戦場 満州、旅順、日本海
終結 1905年のポーツマス条約

この戦争の結果、樺太が南北に分割されました。南半分が日本領、北半分がロシア領となります。

作中の樺太編が成立するのは、この分割があったためです。国境を越える話が、そのまま物語になります。

つまり日露戦争は、作中の人物の過去であると同時に、舞台そのものを作った出来事でもあります。前史であり、現在進行形の条件でもあるということです。

旅順という要塞

攻略目標だった旅順について補足します。

項目 内容
位置 遼東半島の先端付近
性格 ロシアの海軍基地。堅固に要塞化されていた
重要性 ロシア艦隊の拠点だった

旅順にはロシアの艦隊が置かれていました。これを無力化しなければ、日本は海上の主導権を取れません。

二〇三高地が狙われたのも、この事情によるものです。要塞を正面から崩すのではなく、艦隊を直接叩く道が選ばれました。

そして結果として、その判断は機能します。高地の占領後、観測所からの砲撃で港内の艦隊が撃沈され、旅順の開城が早まりました。

戦後に何が起きたか

この戦争は日本の勝利に終わりました。

ところが、戦った兵たちが報われたわけではありません。作中の第七師団が抱えている不満は、ここから来ています。

段階 内容
戦地 甚大な損害を出しながら戦う
戦後 その犠牲が軍内部から批判される
師団長 花沢中将が自責の念から自決する
鶴見中尉 報われなかった兵の行き場を作ろうとする

勝った戦争のあとで、勝った側の兵が居場所を失う。この構図が、金塊争奪戦の出発点になっています。

杉元も、除隊後に帰る場所がありませんでした。北海道で砂金を採っていたのは、行き場がなかったからです。

作品が戦争を描く姿勢

『ゴールデンカムイ』は、戦争を英雄譚として描きません。

描かれること 内容
身体 負傷や欠損が具体的に残り続ける
精神 戻ってきた人物が元に戻らない
制度 戦った兵が報われないという構造
敵側 ロシア側にも事情と人生がある

鶴見中尉の額の金属も、二階堂の失われた耳も、そのまま残ります。治って元通りになる描写は、この作品にはほとんどありません。

ヴァシリのようにロシア側の人物にも、同じだけの背景が与えられました。どちらか一方を悪として描く構図になっていません。

二〇三高地が前史として置かれているのは、そのためです。誰も勝っていないという前提から、物語が始まります。

二〇三高地に関するよくある質問

二〇三高地とは何ですか?

旅順近郊にある標高203メートルの高地です。その高さがそのまま名前になっています。

いつ占領されたのですか?

1904年12月5日です。11月26日から続いた攻撃の末、同日22時に完全占領されました。

なぜこの高地が重要だったのですか?

ここから旅順港が見渡せるためです。観測所を置くことで、港内のロシア艦隊を砲撃できるようになりました。

どれくらいの損害が出たのですか?

戦死者5,000人以上、戦傷者1万人以上とされます。資料によっては全体で1万7,000人の死傷者とするものもあります。

第七師団は関わっていたのですか?

関わっています。12月5日、西南部の一角を死守したのは第七師団歩兵二十七連隊でした。そこを拠点に第七師団の残りと第一師団の一部が攻撃しています。

作中の第七師団と同じ部隊ですか?

同じです。作中で月島基が所属するのは第七師団歩兵第27部隊で、史実の連隊番号と一致しています。

爾霊山とは何ですか?

占領後にこの高地へ与えられた名です。乃木希典大将による命名とされ、「二〇三」の音に通じています。

誰が指揮していたのですか?

日本軍の第三軍を、乃木希典大将が指揮していました。

この戦いは作中の人物にどう影響しましたか?

杉元は生き延びて「不死身の杉元」と呼ばれ、鶴見中尉は前頭部を負傷しました。尾形はこの戦場で異母弟の花沢勇作を撃っています。

花沢中将はなぜ自決したのですか?

第七師団長として、高地攻略で甚大な犠牲を出したことを軍内部から批判されたためです。この死が鶴見中尉の構想の起点になっています。

まとめ

  • 二〇三高地は標高203メートルで、その高さが名前になっている
  • 日本軍が占領したのは1904年12月5日22時
  • 攻撃は11月26日から続き、戦死5,000人以上・戦傷1万人以上とされる
  • 12月5日に西南部を死守したのは第七師団歩兵二十七連隊
  • 作中で月島基が所属する第七師団歩兵第27部隊と、連隊番号が一致する
  • 占領後、乃木希典大将により「爾霊山」と名づけられた
  • 杉元、尾形、鶴見中尉らの前史がすべてこの戦場に置かれている

作中の第七師団が背負っているものは、記録に残る事実です。この戦場を知ってから読むと、鶴見中尉の主張の重さが変わってきます。

この記事について

執筆・編集: マンガノシラベ編集部
公式コミックスおよび公開されている史料をもとに作成しています。内容に誤りを見つけられた場合はお問い合わせよりご連絡ください。