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ネタバレ注意
この記事には『キングダム』単行本46巻から59巻にかけての鄴攻略戦の展開と、史実にもとづく解説が含まれます。

『キングダム』の鄴(ぎょう)攻略戦は、単行本46巻からおよそ14巻分にわたって描かれた大長編です。趙の要衝・鄴を落とすというこの作戦は、秦が本格的に趙を滅ぼしにかかる転換点にあたります。

この記事では、鄴攻略戦の総大将は誰だったのか、結果はどうなったのか、そして誰が死亡したのかという三点を明確に整理します。あわせて、この戦役に対応する史実の鄴の戦い(紀元前236年)も調べました。史実の側にも王翦、桓齮、楊端和の名前が並んでいます。

結論

  • 総大将は王翦(おうせん)です。桓騎と楊端和が別方面を担当する三方面作戦でした。
  • 結果は秦軍の勝利で、鄴は陥落しました。この戦功により信、王賁、蒙恬の三人が将軍に昇格します。
  • 死者は両軍に多数出ています。秦側では将軍・麻鉱、飛信隊の松左と去亥。趙側では尭雲、趙峩龍、岳嬰、そして三大天の龐煖が討たれました。

鄴攻略戦とはどんな戦いか

中国の古代都市の城壁のイメージ
鄴は現在の中国河北省邯鄲市臨漳県あたりに位置していました(画像はイメージです)

鄴攻略戦は、単行本46巻の第490話台から始まる大規模な戦役です。決着と論功行賞までを含めると、59巻の第640話前後まで続きます。作中でも屈指の長さを持つ戦いです。

戦役名 鄴攻略戦(鄴攻め)
掲載範囲 単行本46巻の第490話台から59巻の第640話前後まで
秦の総大将 王翦
秦の主要な軍 王翦軍、桓騎軍、楊端和軍
趙の総大将 李牧
主戦場 朱海平原、橑陽、鄴
結果 秦軍の勝利。鄴は陥落した

作戦の発端は、昌平君が立てた趙滅亡までの期間を大きく短縮する計画でした。鄴は趙の首都・邯鄲のすぐ近くにある要衝であり、ここを取れば趙の心臓部に刃を突きつけられます。

鄴攻略戦の総大将は誰か

鄴攻略戦の秦軍総大将は王翦です。ここは作中でも明確に描かれています。

王翦は当時、六大将軍にも並ぶ実力を持ちながら、独立性の高い動き方をする将軍として描かれてきました。国の総力を投じるこの作戦で総大将に任じられたことは、王翦という人物の評価が確立した瞬間でもあります。

王翦が独断で選んだ策

王翦は総大将に任命されたあと、昌平君から授かった策をそのまま実行しませんでした。鄴周辺の城から住民を鄴城へ集め、そのうえで兵糧攻めにするという方法を、独断で選び取ります。

城に人が増えれば、それだけ食糧の消費が早くなります。守る側の人数を増やすことが、そのまま守る側を追い詰める。この逆転した発想が、鄴攻略戦全体の骨格になっています。

三方面作戦という構成

担当 役割
本軍 王翦 総大将。鄴の攻略と朱海平原での李牧軍との決戦を担う
別動 桓騎 鄴周辺の城を落として住民を追い込む
別動 楊端和 橑陽方面を担当

この三人の組み合わせは、後述する史実の記述とほぼ一致します。作品側が史実の布陣をそのまま採用した部分です。

鄴攻略戦の結果はどうなったか

結果は秦軍の勝利です。鄴は陥落し、秦は趙の中枢に近い拠点を手に入れました。

ただし勝ち方は一方的ではありません。決戦の舞台となった朱海平原では、趙軍を率いる李牧の指揮によって秦軍は何度も崩されかけます。麻鉱将軍が討たれる場面など、秦側が明確に押し込まれた局面もありました。

信、王賁、蒙恬の将軍昇格

この戦役の最大の帰結は、若い三人の将が同時に将軍へ昇格したことです。信、王賁、蒙恬の三人は、それぞれ飛信隊、玉鳳隊、楽華隊を率いて朱海平原で戦い抜き、その戦功が認められました。

主人公である信にとっては、大将軍への道のりのなかでも大きな区切りにあたります。

李牧との決着はついていない

注意したいのは、鄴攻略戦で李牧が敗れたわけではないという点です。鄴という拠点は失われましたが、李牧自身は健在のまま趙へ戻ります。この戦いのあとも、番吾の戦いなどで秦と趙の攻防は続きます。

鄴攻略戦で死亡したのは誰か

鄴攻略戦は犠牲の多い戦いでした。主要な戦死者を両軍に分けて整理します。

秦側の主な戦死者

人物 立場 最期
麻鉱 秦の将軍。中央軍を率いる 朱海平原で李牧の策による奇襲を受けて討たれる。中央が崩れる決定打となった
松左 飛信隊の千人将 干斗ら若い隊員を救ったのち、信の腕のなかで息を引き取る
去亥 飛信隊の千人将 朱海平原で戦死

松左と去亥は飛信隊の初期からの隊員であり、信にとって長く共に戦ってきた仲間でした。この二人の死は、鄴攻略戦が飛信隊にとってどれほど重い戦いだったかを示す部分です。

趙側の主な戦死者

人物 立場 最期
龐煖 趙三大天。武神と呼ばれる 単行本58巻の第627話「道の行方」で信に討たれる
尭雲 趙の名将。李牧が呼び戻した旧世代の将 王賁との一騎打ちの末に敗れる
趙峩龍 趙の名将 信との戦いに敗れる
岳嬰 趙の将 慶舎の仇を討とうと信に挑み、斬られる

とくに大きいのが龐煖の死です。王騎将軍を討った相手であり、信にとっては長年の因縁の相手でした。信は王騎から託された矛を手にこの一騎打ちに臨み、決着をつけます。

なお龐煖は趙三大天のひとりです。三大天のうちのひとりが失われたことは、趙にとって鄴という城以上の損失でした。

史実では? 紀元前236年の鄴の戦い

鄴攻略戦には、明確に対応する史実があります。紀元前236年に起きた鄴の戦いです。

史実の布陣

役割 人物
総大将 王翦
副将 桓齮
末将 楊端和

作中の三方面作戦と、史実の布陣はほぼそのまま対応しています。『キングダム』の桓騎は史実の桓齮にあたる人物です。

史実の経過

秦がこの時期に趙を攻めたのには理由があります。趙の将軍・龐煖が燕へ侵攻しており、趙の国内が手薄になっていたためです。秦はその隙を突きました。

順序 内容
1 秦軍が趙へ侵攻し、まず鄴の周辺にある9つの城を落とす
2 王翦が閼与(あつよ)と轑陽(りょうよう)も攻略する
3 全軍を一軍にまとめる
4 18日後、王翦は斗食以下で軍功のなかった者を国へ帰す
5 残った約2割の精鋭を率いて鄴と轑陽を落とす

周辺の9城に閼与、轑陽、そして鄴を加えて、この戦役で秦が落とした城は合計11となります。

注目したいのは4番目です。王翦は戦いの途中で軍を減らしています。功のない兵を帰し、精鋭だけを残して城を落とす。作中の兵糧攻めとは方法が違いますが、兵の数と兵糧の関係を計算に入れて動いているという点では、発想が通じています。

この戦いが持つ意味

鄴の戦いは、中華統一戦争の始まりに位置づけられる戦役です。ここから8年後の紀元前228年に趙が滅び、15年後の紀元前221年には最後に残った斉が滅んで、中華の統一が完成します。

その間、秦は趙の李牧や楚の項燕の抵抗を受け続けました。鄴の戦いは順調な統一事業の第一歩ではなく、長い消耗戦の入口だったという見方のほうが実態に近いといえます。

漫画と史実の違い

項目 『キングダム』 史実
総大将 王翦 王翦。一致している
共に戦う将 桓騎、楊端和 副将・桓齮、末将・楊端和。ほぼ一致
攻略の方法 周辺の城の住民を鄴に集めて兵糧攻めにする 周辺9城を落としたのち、軍功のない兵を帰して精鋭で攻略
落とした城 鄴を中心に周辺城を攻略 鄴周辺の9城に閼与、轑陽、鄴を加えて計11城
趙側の指揮 李牧が全体を指揮し、朱海平原で王翦と激突 龐煖が燕へ侵攻中で趙国内は手薄。李牧の関与は記録されていない
龐煖 朱海平原で信に討たれる この時期に燕へ侵攻しており、鄴の戦場にはいない

最も大きな違いは龐煖の位置です。史実では、龐煖が燕へ出ていて趙が手薄になったことこそが秦の侵攻理由でした。作中では逆に、その龐煖が鄴の戦場に現れて信と決着をつけます。史実で「不在だったこと」を、作品は「最大の見せ場」に変えています。

李牧についても同様です。史実の鄴の戦いに李牧が関わったという記録は見当たりません。作品は李牧を趙軍の総指揮に据えることで、王翦との頭脳戦という軸を新たに作り出しています。

なぜ鄴攻略戦はこれほど長く描かれたのか

14巻ほどを費やした理由は、この戦いが作品の構造上の分岐点だからだと考えられます。

ひとつは、信たち若い世代が将軍になる場だったことです。信、王賁、蒙恬という三人が同時に昇格するには、それに見合う規模と犠牲が必要でした。松左と去亥という古参の死は、その代償として置かれています。

もうひとつは、龐煖の決着です。王騎の死は物語の初期における最大の喪失であり、その相手を信自身が討つという流れは、避けて通れない筋でした。史実には存在しない対決である以上、説得力を持たせるだけの積み重ねが要ります。

そして、王翦という将軍の像を確立させる場でもありました。史実の王翦は秦の統一戦争で最大の功績を挙げる将軍です。その人物が独断で前代未聞の策を通し、それが通用すると示すことで、以降の展開に必要な土台が置かれました。

アニメでは第何シリーズか

この戦役は、アニメでは第6シリーズにあたります。

主な巻 47巻
アニメ 第6シリーズ
そのシリーズの内容 鄴攻略編。朱海平原の戦いの序盤から中盤

アニメは原作の話をそのまま順番に並べているわけではありません。巻の区切りとシリーズの区切りは完全には一致しないため、目安として捉えてください。

シリーズごとの原作範囲はアニメと原作の対応表にまとめています。

鄴攻略戦に関するよくある質問

鄴攻略戦の総大将は誰ですか?

王翦です。桓騎と楊端和が別方面を担当する三方面作戦で、王翦が全体の総大将を務めました。史実の鄴の戦いでも総大将は王翦です。

鄴攻略戦の結果はどうなりましたか?

秦軍の勝利で、鄴は陥落しました。この戦功により信、王賁、蒙恬の三人が将軍に昇格しています。ただし李牧自身は健在のまま趙へ戻りました。

鄴攻略戦で死亡したのは誰ですか?

秦側では将軍の麻鉱、飛信隊の松左と去亥。趙側では尭雲、趙峩龍、岳嬰、そして趙三大天の龐煖が討たれています。

龐煖が死ぬのは何巻何話ですか?

単行本58巻の第627話「道の行方」です。朱海平原で信との一騎打ちの末に敗れました。信は王騎から託された矛を手にこの戦いに臨んでいます。

鄴攻略戦は何巻から何巻までですか?

単行本46巻の第490話台から始まり、論功行賞までを含めると59巻の第640話前後まで続きます。作中でも屈指の長さを持つ戦役です。

王翦はどんな策を使いましたか?

鄴の周辺の城から住民を鄴城へ集め、そのうえで兵糧攻めにするという策です。昌平君から授かった策をそのまま使わず、独断で選び取った方法でした。

史実の鄴の戦いはいつですか?

紀元前236年です。趙の龐煖が燕へ侵攻して趙国内が手薄になった隙を突いて、秦が侵攻しました。

史実では何城を落としましたか?

合計11城です。まず鄴周辺の9城を落とし、その後に王翦が閼与と轑陽を攻略、さらに精鋭を率いて鄴を落としました。

史実の鄴の戦いに李牧は関わっていますか?

関わったという記録は見当たりません。趙軍を李牧が指揮するという構図は作品側の設定です。史実ではむしろ趙国内が手薄だったことが秦の侵攻理由でした。

鄴攻略戦のあと秦と趙はどうなりましたか?

史実では鄴の戦いから8年後の紀元前228年に趙が滅亡します。作中でも戦いは続いており、鄴の後には番吾の戦いなどが描かれています。

まとめ

  • 鄴攻略戦の秦軍総大将は王翦。桓騎と楊端和が別方面を担う三方面作戦だった
  • 結果は秦軍の勝利で鄴は陥落。信、王賁、蒙恬が将軍に昇格した
  • 秦側は麻鉱、松左、去亥が戦死。趙側は尭雲、趙峩龍、岳嬰、龐煖が討たれた
  • 龐煖の死は単行本58巻の第627話「道の行方」で描かれる
  • 史実の鄴の戦いは紀元前236年。王翦が総大将、桓齮が副将、楊端和が末将で計11城を落とした

史実で「龐煖が燕に出ていて趙が手薄だった」ことが侵攻の理由だったのに対し、作中ではその龐煖が最大の敵として立ちはだかる。この入れ替えを知ってから読み直すと、鄴攻略戦という戦役の組み立て方がよく見えてきます。

続きは単行本で

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この記事について

執筆・編集: マンガノシラベ編集部
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