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ネタバレ注意
この記事には『キングダム』合従軍編(26巻から27巻)の展開に関する記述が含まれます。未読の方はご注意ください。

『キングダム』合従軍編で、落ちないはずの函谷関に初めて敵兵を送り込んだのが井闌車(せいらんしゃ)です。魏の総大将・呉鳳明が持ち込みました。

この記事では、井闌車がどういう兵器なのか、作中で何をしたのか、そして史実にどこまで記録があるのかを整理します。実は「井闌」という名前で確実な記録が残るのは、キングダムの時代よりずっと後です。

結論

  • 井闌車は移動できる高い櫓です。城壁より高く組み、上から城内を攻撃します。
  • 作中の初登場は単行本26巻・第276話「鳳明の手」です。呉鳳明が函谷関専用に設計しました。
  • てこの原理で梯子を城壁へ架けます。頭上の巨岩を落とし、その重みで反対側の梯子を持ち上げる仕組みです。
  • 桓騎が油と火矢で焼き払いました。登ってくる魏兵ごと燃やしています。
  • 史実で確実な井闌の記録は三国時代です。228年、諸葛亮が陳倉で百尺(約30メートル)の井闌を作っています。

井闌車とはどんな兵器か

石造りの城壁と塔のある要塞
井闌車は城壁より高い櫓を組んで攻める兵器です(画像はイメージです)
読み方 せいらんしゃ
種類 攻城兵器。移動式の高い櫓
目的 城壁より高い位置を取り、上から城内を射る
作中の初登場 単行本26巻・第276話「鳳明の手」
使った人物 呉鳳明(魏軍総大将)
史実の確実な記録 三国時代。228年の陳倉攻めで諸葛亮が使用

城攻めで最も不利なのは、下から見上げる形になることです。守る側は城壁の上から射下ろせますが、攻める側は上を向いて射なければなりません。

井闌車はこの高低差をひっくり返すための兵器です。木で高い櫓を組み、車輪を付けて城壁まで押していきます。櫓の上に弓兵を乗せれば、城壁の守備兵と同じ高さ、あるいはそれより上から攻撃できます。

キングダムの井闌車|函谷関に梯子を架けた

合従軍編で呉鳳明が持ち込んだ井闌車は、函谷関を攻めるためだけに設計された特殊なものでした。

函谷関は秦の最終防衛線です。作中では長年落ちたことがない関として描かれ、合従軍の側にも正面から破る手段がありませんでした。そこへ呉鳳明が出したのが、この兵器です。

段階 内容
接近 巨大な井闌車を函谷関の城壁まで押し進める
作動 櫓の頭上に吊るした巨岩の錘を落とす
架橋 錘の重みに引かれ、反対側の巨大な梯子が持ち上がって城壁に届く
突入 梯子を伝って魏兵が城壁上へ雪崩れ込む

てこの原理です。人力では持ち上がらない長大な梯子を、巨岩の落下エネルギーで一気に跳ね上げました。

この瞬間、秦軍だけでなく合従軍本陣の李牧までが席を立ちます。函谷関の城壁に敵の足場が架かるという事態が、それだけ想定外だったということです。

桓騎はどうやって井闌車を止めたのか

1台目で城壁に取り付かれた秦軍は、2台目の井闌車に対して別の手を打ちました。

函谷関の守備には蒙驁・張唐・桓騎が入っています。このうち桓騎が、油の入った樽を井闌車へ投げつけ、そこへ火矢を射込みました。

木で組んだ櫓は燃えます。しかも櫓の内部と梯子には、城壁へ向かって登っている最中の魏兵がいました。桓騎は兵器と、そこに取り付いた自軍以外の人間をまとめて焼いています

攻城兵器としての井闌車は、高さと突破力を得る代わりに、材質が木であるという弱点を抱えています。動きも遅く、いったん城壁に密着すれば逃げられません。桓騎はその一点だけを突きました。

史実では? 井闌の記録が残るのは三国時代

「井闌」という名前ではっきり史料に残るのは、キングダムの時代から400年以上あとの三国時代です。

最もよく知られるのが、228年の陳倉の戦いです。蜀の諸葛亮が魏の郝昭が守る陳倉城を攻めた際、百尺(約30メートル)の井闌を作らせ、城内へ矢を射込みながら堀を土で埋めて城壁へ取り付こうとしました。

ちなみにこの攻めは成功していません。郝昭が城の内側にもう一重の壁を築いて対応したためです。井闌は決定打にならず、諸葛亮は撤退しています。

兵器 戦国時代の記録 内容
雲梯(うんてい) あり 城壁に架ける長大な梯子。『墨子』に公輸盤が作った雲梯と、それを墨子が防ぐ攻防の記述がある
弩(ど) あり 機械式の弓。兵馬俑の坑から青銅製の弩機が大量に出土している
攻城弩 あり 『墨子』に全高2.4メートルほどの大型の弩の記述がある
投石機 あり てこの原理で石を飛ばす装置。『墨子』に記述がある
井闌 名称としては確認できない 高い櫓を組む発想そのものは古いが、この語での確実な記録は三国時代から

つまり秦の時代に高い櫓を使う攻城戦がなかったという意味ではありません。雲梯のように、城壁へ取り付くための大型装置は『墨子』の時点で書かれています。ただし「井闌」という具体的な兵器名で追える記録は、三国時代まで下ります。

弩|秦が統一できた理由とされる兵器

作中でも各所に登場する弩は、史実の秦を語るうえで欠かせません。

弩は引き絞った状態で固定できる機械式の弓です。通常の弓は引いたまま狙いを定めるのに膂力が要りますが、弩は弦を金具で留めておけるため、狙う時間を取れます。訓練期間も短くて済みます。

兵馬俑の坑からは、青銅製の弩機(引き金の部分)が大量に出土しています。部品の精度が高く、規格が揃っていることから、大量生産されていたと考えられています。個々の兵の技量に頼らず、装備の性能と数で押す軍隊が、この時代に成立していたことになります。

漫画と史実の違い

項目 『キングダム』 史実
井闌車 合従軍編で呉鳳明が投入 この名での確実な記録は三国時代(228年・陳倉)
てこ式の架橋機構 巨岩の錘で梯子を跳ね上げる 該当する記録はない。作品の創作
呉鳳明 兵器設計に長けた魏の総大将 該当する人物の記録はない
函谷関 秦の最終防衛線 実在。現在の河南省霊宝市
各軍が使用 実在。兵馬俑から青銅弩機が出土
雲梯 攻城の場面で登場 実在。『墨子』に記述がある

なぜ呉鳳明は兵器で戦うのか

呉鳳明の父は、蛇甘平原で麃公に討たれた呉慶です。魏火龍七師のひとりで、武で戦う将でした。

その子である呉鳳明は、武ではなく設計で戦います。函谷関に対しても、力で押し破るのではなく、届かない高さに届く装置を作るという解き方をしました。

合従軍編で井闌車が城壁に梯子を架けた場面は、個人の武ではどうにもならない差を、道具が埋めた瞬間です。作中で秦の側がそれを止められたのも、より強い武ではなく、油と火という別の道具でした。

アニメでは第何シリーズか

この場面は、アニメでは第3シリーズにあたります。

単行本 26巻
アニメ 第3シリーズ
そのシリーズの内容 合従軍編。函谷関の攻防と蕞の防衛戦

アニメは原作の話をそのまま順番に並べているわけではありません。巻の区切りとシリーズの区切りは完全には一致しないため、目安として捉えてください。

シリーズごとの原作範囲はアニメと原作の対応表にまとめています。

井闌車に関するよくある質問

井闌車の読み方は何ですか?

せいらんしゃです。「井闌」だけで呼ばれることもあります。

井闌車はキングダムの何巻何話で登場しますか?

単行本26巻・第276話「鳳明の手」です。合従軍編の函谷関攻防戦にあたります。

井闌車はどういう仕組みですか?

木で高い櫓を組み、車輪で城壁まで押していく兵器です。作中のものは、頭上に吊るした巨岩の錘を落とし、てこの原理で反対側の巨大な梯子を城壁へ架ける構造でした。

井闌車の高さはどれくらいですか?

作中では函谷関の城壁を越える高さとして描かれています。史実では228年に諸葛亮が百尺、約30メートルの井闌を作ったという記録があります。

誰が井闌車を止めたのですか?

桓騎です。油の樽を投げつけて火矢を射込み、登っていた魏兵ごと焼き払いました。

井闌車は実在した兵器ですか?

実在します。ただし「井闌」という名前で確実に記録が残るのは三国時代からで、キングダムの時代である戦国時代の史料では、この名称は確認できません。

戦国時代に攻城兵器はあったのですか?

ありました。『墨子』には雲梯、大型の弩、てこ式の投石機についての記述があります。城を攻める側と守る側、それぞれの技術がこの時代にすでに書き残されています。

雲梯と井闌車は何が違うのですか?

雲梯は城壁に架けて登るための長大な梯子です。井闌は高い櫓そのもので、上から射かけるための足場になります。作中の井闌車は、この両方の役割を1台で兼ねた形になっています。

弩は本当に秦の強さの理由なのですか?

有力な要因のひとつとされています。兵馬俑から出土した青銅製の弩機は規格が揃っており、大量生産されていたと考えられています。訓練期間の短さと威力の両立が、大軍を短期間で戦力化することを可能にしました。

呉鳳明は史実に実在しますか?

していません。父とされる呉慶を含め、魏火龍七師の人物は史料に記録がありません。

まとめ

  • 井闌車は城壁より高い櫓を組んで上から攻める移動式の攻城兵器
  • 作中の初登場は単行本26巻・第276話「鳳明の手」。呉鳳明が函谷関専用に設計した
  • てこの原理で巨大な梯子を城壁へ架け、函谷関に初めて足場を作った
  • 桓騎が油樽と火矢で2台目を焼き払い、登っていた魏兵ごと燃やした
  • 「井闌」の名で確実な史料の記録は三国時代。228年に諸葛亮が百尺の井闌を使った
  • 戦国時代には雲梯・弩・投石機が実在し、『墨子』に記述が残る

函谷関という「落ちない前提」を、武ではなく設計で崩しにきた兵器です。そしてそれを止めたのも、より強い武ではありませんでした。合従軍編の函谷関戦は、道具と道具のぶつかり合いとして読むこともできます。

この記事について

執筆・編集: マンガノシラベ編集部
公式コミックスおよび公開されている史料をもとに作成しています。内容に誤りを見つけられた場合はお問い合わせよりご連絡ください。