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ネタバレ注意
この記事には『鬼滅の刃』本編の結末(1巻から23巻)と最終話の内容が含まれます。

『鬼滅の刃』において、鬼舞辻無惨が千年以上にわたって探し続けたものが「青い彼岸花」です。無惨が鬼を増やし続けた目的のひとつであり、物語の根本に置かれた設定でもあります。

この記事では、青い彼岸花がどこにあったのか、なぜ無惨は千年かけても見つけられなかったのか、そして最後にどうなったのかを作中の描写にもとづいて整理します。あわせて、実在するヒガンバナがどのような植物なのか、そして「青い花」が自然界でなぜ希少なのかも調べました。

結論

  • 青い彼岸花は、無惨を鬼に変えた薬の原料です。平安時代の医者が調合した薬に使われていました。
  • 無惨が見つけられなかった理由は開花条件です。一年のうち二日か三日、しかも昼のあいだしか咲かないため、日光の下に出られない鬼には発見できませんでした。
  • 咲いていた場所は竈門家の近くとされます。無惨は竈門家を襲った夜、その花のすぐそばまで来ていながら気づかずに立ち去ったことになります。最終的な顛末は単行本23巻 第205話で描かれました。

青い彼岸花とは

森のなかに立つ木造の灯籠のイメージ
無惨は日の当たらない時間しか動けないため、昼に咲く花を探すことができませんでした(画像はイメージです)
名称 青い彼岸花(あおいひがんばな)
正体 平安時代の医者が無惨に処方した薬の原料
探していた人物 鬼舞辻無惨。および無惨の命令を受けた鬼たち
探していた理由 太陽を克服し、完全な肉体を得るため
開花条件 一年のうち二日か三日、昼のあいだのみ。気候によっては咲かない年もある
咲いていた場所 竈門家の近く。継国縁壱の妻・うたが埋葬された地とされる
実在するか 作品オリジナルの花。現実に青いヒガンバナは存在しない

青い彼岸花は、作中で最も長く引っ張られた謎です。第1巻の時点ですでに無惨が求めているものとして存在し、答えが完全に出るのは最終話でした。

無惨はなぜ青い彼岸花を探していたのか

無惨はもともと平安時代の人間でした。生まれつき体が弱く、二十歳まで生きられないと言われていた少年です。その無惨を診ていた医者が調合した薬に、青い彼岸花が使われていました。

ところが薬を飲んでも容体は好転しません。腹を立てた無惨は医者を斬り殺します。その直後に薬が効きはじめ、虚弱だった体は頑健になりました。しかし同時に、太陽の光に耐えられず、人の血肉を求める体にもなっていました。人喰いの鬼の誕生です。

ここが物語のすべての起点になります。無惨は医者を殺したことで、その薬の処方を永遠に失いました。何の花が使われていたのかは分かっても、それがどこに咲いているのかは分からない。太陽を克服するための唯一の手がかりが、自分が殺した相手の頭の中にしかなかったわけです。

無惨の来歴は無惨の最後は何巻何話?で詳しく整理しています。

もうひとつの手段:太陽を克服した鬼を取り込む

無惨が太陽を克服するために取った手段は二つでした。青い彼岸花を探させることと、鬼を大量に増やしてそのなかから日光に耐える個体が出るのを待つことです。

結果として、後者が先に成功します。竈門禰豆子が日光を克服したためです。この時点から無惨の関心は禰豆子に移り、青い彼岸花は最後まで見つからないまま物語が進みました。

青い彼岸花はどこにあったのか

作中および公式ファンブックの記述をあわせると、青い彼岸花は竈門家の近くに咲いていたと考えられます。より正確には、はじまりの剣士・継国縁壱の妻であるうたが埋葬された地に生えていたとされます。

縁壱とうたが暮らしていた場所と竈門家のある場所が重なるため、竈門家のすぐそばにうたの墓があり、そこに青い彼岸花が咲いていたという整理になります。

手がかり 内容
炭治郎の記憶 幼いころ、母・葵枝に連れられて青い花を見たことがある。累との戦いの走馬灯(5巻 第39話「走馬灯の記憶」)にこの光景が描かれる
公式ファンブック 『鬼殺隊見聞録・弐』の継国縁壱の紹介ページで、うたの埋葬地に青い彼岸花が咲いていたことが示された
本格的に語られる箇所 単行本8巻 第67話「さがしもの」
最終的な顛末 単行本23巻 第205話「幾星霜を煌めく命」の現代編

ここから導かれるのが、この作品でも指折りの皮肉な事実です。無惨は竈門家を襲撃するために、みずからその場所へ足を運んでいました。千年探していたものの目と鼻の先まで来ていながら、夜だったために気づかず立ち去ったことになります。

ただし「無惨が花のすぐ横を通った」と作中で明言されているわけではありません。ファンブックの記述と本編の描写を突き合わせた結果として、そう読めるという整理です。断定は避けておきます。

なぜ千年も見つからなかったのか

理由は花そのものの性質にあります。青い彼岸花は一年のうち二日か三日、それも昼のあいだしか咲きません。さらに気候の条件によっては、一年を通して一度も咲かないことがあります。

条件 鬼にとっての意味
年に二、三日しか咲かない 探索できる日が極端に少ない。ほとんどの日は地上に姿がない
咲くのは昼間だけ 鬼は日光を浴びると焼滅する。咲いている時間帯に地上へ出られない
咲かない年がある その年に総力を挙げて探しても成果がゼロになりうる
咲いていないときは目立たない 花が閉じた状態では見分けがつきにくいとされる

つまり無惨は、原理的に自分では絶対に見つけられないものを探していたことになります。人間を使えばよいと思うところですが、無惨は人間を信用しません。鬼にしか命令を下さない性格そのものが、千年の空振りを生んだとも読めます。

青い彼岸花は最後どうなったのか

青い彼岸花の顛末が描かれるのは、単行本23巻 第205話「幾星霜を煌めく命」です。最終話の舞台は現代の日本に移り、本編の人物たちの子孫が平和に暮らす姿が描かれます。

そのなかに、嘴平伊之助と神崎アオイの子孫とされる植物学者・嘴平青葉が登場します。青葉は青い彼岸花を発見しますが、扱いを誤って枯らしてしまったことが語られます。無惨が千年かけて見つけられなかった花は、無惨がいなくなった世界であっけなく失われました。

この幕引きは、青い彼岸花という設定の性格をよく表しています。作中でこの花が誰かを救ったことは一度もありません。無惨を鬼に変え、無惨に千年を費やさせ、最後は誰の役にも立たずに消える。物語を動かし続けたのに、物語には何も与えなかった花です。

史実では? 実在するヒガンバナはどんな植物か

秋に咲く赤いヒガンバナのイメージ
実在するヒガンバナは秋の彼岸のころに赤い花を咲かせます(画像はイメージです)

青い彼岸花は架空の花ですが、ヒガンバナ自体は実在します。そしてこの植物は、毒と食料と人の営みが複雑に絡み合った、きわめて特異な来歴を持っています。

学名 Lycoris radiata
別名 曼珠沙華、カミソリバナ、シビトバナ、トウロウバナなど
原産 中国大陸。有史以前に日本へ渡来したと考えられている
開花期 秋の彼岸のころ(9月)
鱗茎にリコリンなどのアルカロイドを含む。リコリンが有毒成分の約半分を占める
繁殖 日本のヒガンバナは三倍体で、原則として種子をつけない
花言葉 情熱、独立、再会、あきらめ、悲しい思い出、旅情などとされる

毒がありながら、飢饉のときに食べられていた

ヒガンバナの鱗茎にはリコリンをはじめとする有毒アルカロイドが含まれます。毒抜きをせずに食べれば激しい嘔吐や下痢を起こし、重ければ中枢神経の麻痺にまで至ります。

ところがこの毒には決定的な特徴があります。水溶性なのです。鱗茎をすりつぶして長時間水にさらせば毒は流れ去り、あとには大量のデンプンが残ります。

この性質のため、ヒガンバナは古くから救荒作物として各地に植えられてきました。飢饉のときに掘り起こして毒を抜き、食料にするための備えです。日本では第二次世界大戦中にも食用にされた記録があります。危険な毒草でありながら、いざというときに人の命をつなぐ植物でもありました。

田の畦に植えられた理由

ヒガンバナが田んぼの畦に列をなして咲く光景は各地で見られます。これは自然にそうなったのではなく、人が植えたものです。

理由は毒にあります。水田の畦に穴を掘るネズミやモグラ、虫が鱗茎の毒を嫌うため、畦を守る役目を果たしました。畦に穴が空けば水が漏れ、稲作が成り立ちません。ヒガンバナは農地を守る防除装置として並べられていたわけです。

種子をつけないのに全国に広がっている理由

ヒガンバナで最も驚くべき点がここです。日本のヒガンバナは三倍体であり、原則として種子をつけません。風にも鳥にも運ばれず、自力では一歩も動けない植物です。

それにもかかわらず、北から南までほぼ全国に分布しています。答えは単純で、人が球根を掘って持ち運び、植え継いできたからです。畦に、墓地に、寺の境内に。今わたしたちが見ているヒガンバナの群生は、ほぼすべてが人の手によって配置されたものだということになります。

墓地に多いのも同じ理由です。土葬が一般的だった時代に、遺体を掘り返す動物を毒で遠ざけるために植えられたと説明されます。シビトバナという別名もここから来ています。

青い花はなぜ珍しいのか

では「青い彼岸花」は現実にありうるのでしょうか。ここには植物学上の高い壁があります。

花の青色を出す代表的な色素はデルフィニジンという物質です。この色素を作るには、専用の酵素をつくる遺伝子が必要になります。ところがバラをはじめとする多くの植物には、その遺伝子そのものがありません。だから青い花は自然界に少なく、園芸の世界でも長く不可能とされてきました。

その壁を越えたのが、青いバラの開発です。

出来事
1990年ごろ サントリーとオーストラリアの企業(現フロリジーン)が共同研究を開始する
2004年6月30日 遺伝子組換えにより、青色色素デルフィニジンを花弁に持つ世界初のバラの完成が発表される
2008年1月31日 カルタヘナ法にもとづく第一種使用規程の承認を得る
2009年11月3日 切り花「SUNTORY blue rose APPLAUSE(アプローズ)」として発売される

青いバラを作るためにサントリーが取った方法は、パンジーからデルフィニジン合成に関わる遺伝子を取り出し、バラに組み込むというものでした。ひとつの花の色を変えるだけのために、およそ20年が費やされています。

ここで作中に戻ると、青い彼岸花の位置づけがよく見えてきます。ヒガンバナは種子をつけず、人が運ばなければ広がらない植物です。そこへ、自然界では成立しにくい青という色が加わる。無惨が千年探して見つからないという設定は、植物学的に見ても筋が通っていることになります。

漫画と史実の違い

項目 『鬼滅の刃』 実在のヒガンバナ
花の色 赤。白や黄の近縁種はあるが、青いヒガンバナは存在しない
開花 年に二、三日、昼間のみ 秋の彼岸のころに咲き、数日から一週間ほど花が保つ
薬の原料として鬼化を引き起こす 鱗茎にリコリンなどを含む。毒抜きすれば食用になる
人との関わり 無惨に千年探させ、最後は枯れて失われる 飢饉に備える救荒作物、畦や墓地を守る植物として人が植え継いできた
繁殖 特定の場所にのみ自生する 三倍体で種子をつけず、人の手でしか広がらない

なぜ「彼岸花」だったのか

数ある花のなかからヒガンバナが選ばれたのには理由があると考えられます。ヒガンバナは秋の彼岸に咲きます。彼岸とは仏教で此岸の対、つまり死者の側を指す言葉です。シビトバナという別名を持ち、墓地に群れて咲く花でもあります。

そのうえ、毒を持ちながら飢えを救う植物でもある。害にも薬にもなるという二面性は、無惨を鬼に変えた薬の原料としてこれ以上ないほど噛み合っています。

そこにさらに「青」という、自然界ではほとんど成立しない色が乗ります。死の側の花であり、毒でもあり薬でもあり、そしてありえない色をしている。無惨が千年追い続けたものが、そもそも存在自体が不自然な花だったという構図です。

鬼を人間に戻す薬を作り上げた珠世が、最後まで青い彼岸花に頼らなかったことも対照的です。珠世の研究については珠世ポイズンとは?4種類の薬の効果で扱っています。無惨が幻の花を探し続けた千年のあいだに、珠世は手元にある材料で答えにたどり着いていました。

青い彼岸花に関するよくある質問

青い彼岸花はどこにありましたか?

竈門家の近くとされます。より正確には、はじまりの剣士・継国縁壱の妻であるうたが埋葬された地に咲いていたと、公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』で示されました。

なぜ無惨は青い彼岸花を見つけられなかったのですか?

一年のうち二日か三日、それも昼のあいだしか咲かない花だったためです。鬼は日光を浴びると焼滅するため、咲いている時間帯に地上へ出ることができませんでした。

青い彼岸花の正体は何ですか?

平安時代の医者が無惨に処方した薬の原料です。無惨はその薬によって鬼になりました。太陽を克服した完全な体を得るため、無惨は同じ花を探し続けていました。

炭治郎は青い彼岸花を見たことがありますか?

あります。幼いころに母・葵枝に連れられて見たとされ、累との戦いの走馬灯の場面にその光景が描かれています。単行本5巻 第39話にあたります。

青い彼岸花は最後どうなりましたか?

最終話にあたる単行本23巻 第205話の現代編で、伊之助とアオイの子孫である植物学者・嘴平青葉が発見しますが、扱いを誤って枯らしてしまったことが語られます。

青い彼岸花は実在しますか?

実在しません。作品オリジナルの花です。実在のヒガンバナは赤く、白や黄色の近縁種はありますが、青い品種は確認されていません。

本物のヒガンバナには毒がありますか?

あります。鱗茎にリコリンなどのアルカロイドを含み、そのままでは有毒です。ただし毒は水溶性のため、すりつぶして長時間水にさらせば無毒化でき、飢饉のときには食用にされてきました。

ヒガンバナが田んぼの畦に植えられているのはなぜですか?

鱗茎の毒でネズミやモグラを遠ざけるためです。畦に穴を空けられると水が漏れて稲作に支障が出るため、防除の目的で人が植えました。

青い彼岸花が語られるのは何巻何話ですか?

本格的に語られるのは単行本8巻 第67話「さがしもの」です。炭治郎の走馬灯に描かれるのが5巻 第39話、最終的な顛末が23巻 第205話になります。

青い花はなぜ珍しいのですか?

青色のもとになるデルフィニジンという色素を作る遺伝子を持たない植物が多いためです。サントリーは遺伝子組換えでこの壁を越え、2004年に世界初の青いバラの完成を発表し、2009年に切り花として発売しました。

まとめ

  • 青い彼岸花は、平安時代の医者が無惨に処方した薬の原料
  • 咲いていたのは竈門家の近く。継国縁壱の妻・うたが埋葬された地とされる
  • 見つからなかった理由は、年に二、三日、昼間しか咲かないという開花条件
  • 最終話では伊之助の子孫である嘴平青葉が発見するが、枯らしてしまう
  • 実在のヒガンバナは三倍体で種子をつけず、人が植え継いできた植物。毒を持ちながら救荒作物でもあった

無惨が千年をかけて探したものは、日の光の下でしか姿を見せない花でした。太陽を避けて生きる者には、原理的にたどり着けない。この設定ひとつに、作品全体の答えが先に置かれていたことになります。

続きは単行本で

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この記事について

執筆・編集: マンガノシラベ編集部
公式コミックスおよび公開されている史料をもとに作成しています。内容に誤りを見つけられた場合はお問い合わせよりご連絡ください。